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はじまりの季節 — 第23話

【35歳・恋愛未経験】男子校・理系出身の呪いと初めての会話|オソコイ 30代の恋愛体験ストーリー

4分

主人公: 35歳 / メーカー技術職

恋愛未経験コンプレックス理系環境のせい決意環境

環境という名の完璧な言い訳

「俺の人生、見事に男しかいないな」

工場の喫煙所で缶コーヒーを飲みながら、35歳の俺は自嘲気味につぶやいた。 中学・高校はゴリゴリの男子校。大学は工学部で、講義室にいる女性は片手で数えるほど。そして就職先はメーカーの開発部門。配属された部署は、見事にむさ苦しい男たちだけの世界だった。

女性と日常的に会話をする機会なんて、人生で一度もなかった。 だから、35歳になっても彼女がいたことがないのは「環境のせい」だと思っていた。俺に魅力がないわけじゃない。ただ、出会いがなかっただけだ、と。

「出会いがないなら、アプリとか使えばいいじゃん」 既婚者の同僚からそう言われるたびに、俺は「いや、自然な出会いがいいんだよね」と適当にごまかしてきた。 だが、本当は違った。

俺は、女性が怖いのだ。

何を話せばいいのかわからない。自分の趣味であるプラモデルや回路設計の話なんて、女性が面白いと思うはずがない。沈黙が訪れたらどうすればいい? もし「つまらない男」だと見透かされたら? 男子校のノリしか知らない俺は、女性という「未知の生物」とのコミュニケーションから、ただ逃げ続けていただけだった。

鏡の中の「言い訳おじさん」

35歳の誕生日の夜。 一人でコンビニのショートケーキを食べている時、洗面所の鏡に映った自分の顔を見て、ふと強烈な焦燥感に襲われた。

そこには、疲れた顔をしたただのおじさんがいた。 「環境に恵まれなかった」という完璧な言い訳の盾に隠れて、傷つくことを恐れ、誰とも深く関わろうとしなかった結果がこれだ。 このまま10年、20年経っても、俺はずっと「出会いがなかっただけ」と言い訳を続けるのだろうか。

自然な出会いなんて、この先100年待っても来ない。 誰かが手を引いてくれるわけでもない。

翌日、俺はネットで見つけた婚活サービスに登録した。 アプリでいきなり1対1で会う自信はなかったから、第三者の担当者が仲介してくれるタイプのものを選んだ。自分の市場価値を客観的に突きつけられるのが怖かったが、もう逃げたくなかった。

不器用な自己開示

そして迎えた、初めてのお見合い。 ホテルのラウンジで待っていたのは、同い年の保育士の女性だった。

心臓が口から飛び出そうだった。手汗でグラスが滑りそうだ。 「はじめまして……」 絞り出すように発した声は、情けないほど震えていた。

彼女は優しく微笑んで、「緊張しますよね。私もこういう場所は不慣れで」と言ってくれた。 俺は、見栄を張るのをやめることにした。完璧な男を演じようとするから苦しいのだ。

「実は、ずっと男ばかりの環境にいて……女性とお話しするのが、すごく不慣れなんです。つまらない思いをさせてしまったらすみません」

すると彼女は、クスッと笑って言った。 「真面目なんですね。大丈夫ですよ、私も職場の女性ばかりで、男性と話すのは久しぶりですから」

その瞬間、俺の中で張り詰めていた糸がふっと緩んだ。 女性は「未知の生物」なんかじゃなかった。俺と同じように緊張し、相手を探しにきている、ひとりの人間だった。 流暢なエスコートなんてできなくても、不器用な自分を隠さずに誠実に向き合えば、会話はちゃんと成立するのだ。

俺の人生の「バグ」が、少しだけ修正された音がした。 35年間、環境のせいにして逃げてきた俺は、今日ようやく、自分の足でスタートラインに立ったのだ。

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