はじまりの季節 — 第12話
【35歳・諦め】30代後半で恋愛経験なしは手遅れか?|オソコイ 30代の恋愛体験ストーリー
主人公: 38歳 / 地方公務員
覚悟を決めるための検索
「彼女いない歴年齢 諦めるべきか」
38歳の地方公務員、真一は、布団の中でその文字を打ち込んだ。 あと2年で40歳。人生の折り返し地点が見えてきた今、真一の心にあるのは焦りではなく、奇妙なほど静かな「諦観」だった。
これまでの人生、女性とまともに手をつないだことすらない。 仕事は真面目にこなしてきた。休日は読書をしたり、少し遠出をして温泉に入ったりして、それなりに満ち足りている。
「もう、恋愛や結婚は自分の人生には無縁のものだ。そろそろ一人で生きる覚悟を、きちんと決める時期なのかもしれない」
ネットで検索すると、「40歳手前で未経験なら諦めて趣味に生きるべき」「いや、まだ遅くない」という相反する意見が飛び交っていた。 どちらの意見も一理ある。だが、真一の心は「諦める」方に傾きかけていた。これ以上、傷ついたり、期待して裏切られたりするエネルギーが残っていない気がしたからだ。
諦める前に、一つだけやり残したこと
週末、一人で近所の定食屋でアジフライ定食を食べていた時のことだ。 ふと、隣の席で笑い合う同年代の夫婦を見て、真一の胸の奥がチクリと痛んだ。
「本当に、これでいいのか」
諦めるのは簡単だ。「自分には縁がなかった」と言い聞かせれば、それで済む。 しかし、これまでの人生で、自分は「恋愛」に対して何か具体的な行動を起こしたことがあっただろうか。 合コンには行かず、友人の紹介も断り、ただ「自然な出会い」が空から降ってくるのを38年間待っていただけだ。
「何もしていないのに、諦めることなんてできない」
どうせ諦めるなら、人生で一度くらい、格好悪くても本気で足掻いてからにしよう。 マッチングアプリに登録して、それでも誰からも見向きされなかったら、その時は本当に諦めがつく。 そう思えた瞬間、真一の中に不思議な力が湧いてきた。
最後の悪足掻きの行き先
帰宅した真一は、すぐに真面目な婚活アプリを探して登録した。 プロフィール写真は、数少ない友人に頼み込んで、公園で自然な笑顔のものを撮ってもらった。
自己紹介文には、見栄を張らずにこう書いた。 「今まで仕事ばかりで、恋愛には縁がありませんでした。もうすぐ40歳になりますが、このまま一人で生きていく前に、誰かと真剣に向き合ってみたいと思い登録しました」
彼女いない歴イコール年齢であることを、隠さずに書いた。 これで引かれるなら、それでいい。これが自分の「最後の悪足掻き」なのだから。
それから2週間後。 真一のスマートフォンに、1件のメッセージが届いた。 相手は36歳の、図書館司書をしているという女性だった。
『はじめまして。私も、ずっと本ばかり読んでいて出会いがなく、今回思い切って登録しました。真一さんの正直なプロフィールに、とても誠実さを感じました』
真一は、画面を見つめたまま大きく息を吐き出した。 まだ、何も始まっていないかもしれない。しかし、「諦めるための悪足掻き」は、どうやら思わぬ方向へ転がり始めたようだ。
40歳までの2年間。真一の人生は、予想もしていなかった色に染まり始めていた。
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